ぼちぼち そこそこ

脱力と諦観でつづるおっさんの日常

子猿でプロデュース

4日の朝刊各紙に出ている京都大学霊長類研究所の記事には脱帽した。
チンパンジーの子は大学生よりも「賢い」のだそうだ。記事↓は毎日新聞。
http://mainichi.jp/photo/news/20071204k0000m040147000c.html
瞬間的な記憶力について人間の大人より優れているという研究結果なのだそうで、人間がすべての知性で万物の霊長である常識を覆すものなのだとか(京都新聞)。
脱帽したのは、賢いチンパンジーに対してではなく、研究所の人たちに対してだ。この人たちは、どういう発表をしたら大きい記事になるかがよくわかっている。
以下は京都新聞による。↓
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007120400017&genre=G1&area=K10
取り上げたいのは以下のようなことである。
記事の最後のほうの松沢哲郎教授の談話にも出てくるが、ヒトはチンパンジーに比べて記憶力を犠牲にする代わりに言語を獲得したとも考えられるという。さらに、子から大人になるときに関しても同じようなことがいえるのかもしれないという。
この仮説に照らしていえば、1.ヒトに比べてチンパンジーは記憶力がいいかもしれない 2.子は大人より記憶力がいいかもしれない-となる。これはおそらく当該の実験前からある程度見当がついていたことなのではなかったか。
そのうえでの実験なのだが、歳によって瞬間記憶力に違いがあるとすれば、チンパンジーとヒトとを比較するのなら、本来は同じ年齢で比べないといけないはずだ。実験に出てくるチンパンジーはヒトでいえば8歳ぐらいというから、対象は小学校3年生ぐらいでないといけないはずだ。
それが実際には大学生と比較している。どうしてなのか。
以下はあくまで想像です。
賢いという点でいえば、普通は子より大人、チンパンジーよりヒトという観念が一般的だ。それこそ、万物の霊長に関しての常識のひとつだといっていい。記事にもあるとおり、その常識を覆してみせるところにこの研究発表の面白みがある。面白ければ大きく記事として紹介してもらえる。
それには比較対象は小学生では面白くない。一般的に賢いと思われている大学生のほうが効果的だ。
このへん、発表側はどうすれば大きな記事になるかよくこころえている感じがする。脱帽したのは、霊長類研究所の売り込み感覚、プロデュース感覚に対してだ。
かといって学問的なフォローも怠りなくやっている。京都新聞ではヒトの子供のデータも比較対象として現在集めている、と書いている。発表側はちゃんと「続けて研究してますよ」と言ってるということなんだろうし、記者も「これはいちおう触れておかないといけないだろう」と考えてこの一節を入れたのだろう。
本筋から離れるが、ひとつ思ったのは、松沢氏のいう「ヒトは記憶を犠牲にして言語を獲得したのでは」という点だ。進化、発展の鍵は忘却ということなんだろうか。なんでも覚えるのがいいわけでない。忘れることも能力のひとつだ。人間には「忘却力」も大切だ、ということなのかな。
ところで。大学生って、もしかして京大生?
注・すんまへん、サルとチンパンジーは違いますよね。