ぼちぼち そこそこ

脱力と諦観でつづるおっさんの日常

お伝えしたかった主旨

いまさらという感じですが、京都の企業の話題なので私も一言。

「休みたいならやめればいい」――。日本電産永守重信社長は23日、記者会見で「社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる。たっぷり休んで、結果的に会社が傾いて人員整理するのでは意味がない」と持論を展開。10年間で売上高が6倍超という成長の原動力が社員の「ハードワーク」にあることを強調した。

朝日新聞4月24日付朝刊の記事です。
http://www.asahi.com/business/update/0423/OSK200804230044.html
これに対して日本電産が自社HPで以下のように「反論」してます。

4月24日付け一部報道記事に、4月23日の決算発表記者会見において、弊社社長永守が「休みたいならやめればいい」と発言したかのような内容が掲載されましたが、そのような事実はなく、誠に遺憾に思っております。

http://www.nidec.co.jp/news/indexdata/2008/0428/CMFStandard1_content_view
この中で気になる表現がありました。

永守がお伝えしたかった主旨は以下の通りでございます。

私は記者会見の場にいたわけではないので、なんともいえないのですが、「事実はない」と大見得を切っておきながら、「お伝えしたかった主旨」というのはなんか腰砕けな感じがします。広報は社長の発言を録音しているはずですし、事実無根というのなら、本来は一字一句を再現してHPに掲載したうえで、「事実はない」といえば説得力がでるはずです。
それが、主旨はとくると、「ニュアンスは多少違うけど、そのような意味のことは言ってるのではないか」と思われてもしかたないでしょう。
大企業の社長なんだから、たとえ主旨は正しくても表現には細心の注意を払うべきでしょうし、もし信念をもって言ったとしたら、その発言を広報が勝手に修正していいのかとも思います。
以下はあくまで想像です。
永守氏はある程度、信念をもって発言したのではないでしょうか。私もその「主旨」はわからないではありません。
原則的に時短を進めてワークライフバランスを推進していくというのが世の中の趨勢ですから、企業全体の業務量が一定な場合、時短を進めれば従業員の数は増えることになります(まあ業務効率化もあるんでしょうが、ここではおきます)。そのなかで、企業の業績が悪化したときに、急に賃金を下げるわけにもいかないでしょうから、従業員のリストラとなるのはある意味ひとつの方向性かもしれません。
現在の日本でコンプライアンスを徹底すれば、どの企業でも以上のようなことをせざるをえない。すなわち、ワークライフバランスはトレンドだからやっていくけど、いざとなったらリストラをやりますよ、ということです。
これに永守氏は異議を申し立てているのではないでしょうか。その矛先はどこに向けられているか。氏が指弾しているのは、他の大企業の甘ちゃんな姿勢ではなく、制度や世の趨勢を形成している行政のあり方ではないかという気がします。
まあでも法令順守はやっぱり必要でしょうし、難しい問題です。私も氏に百パーセント賛同するものではありません。
今回は、大企業の社長の失言をとらえたある意味、典型的な朝日新聞的報道でしたが、これを契機にもっと深く考えてみてもいいのではないかという気もします。「主旨は」などと広報が火消しに走らず、真っ向から議論すればいいのではないでしょうか。