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ワンルーム規制−理屈じゃない

京都市下京区の有隣学区が、防災など地域一体のまちづくりのため、一人暮らしの学生や会社員が入居するワンルームマンションの建設を禁止する規制策を検討している。

(2008年7月3日の京都新聞)
京都新聞によると、同学区は京都駅や繁華街の四条河原町に近いなど利便性がよく、人口約3300人の半分以上をマンション住民が占めているらしいです。同住民が町内会に加入している例はほとんどなく、災害時の対応が地域の課題となっているようです。
規制は、地元要望を受けて京都市が地区計画を策定、条例改正して早ければ来年度から実施する運びのようです。市都市づくり推進課は「画期的な案で、支援したい」といってるようです。
ポイントとしては、町並み保全の観点からのマンション規制ではなく、まちづくりの視点からワンルームに限定した建設規制だという点でしょう。たしかにワンルームに住む単身者が町内会に入るケースはまれでしょう。そしてそういった人が増えれば町内会の活動に支障が出るのもわかります。記事にはありませんが、地元住民としてはこれまで単身者をなんとかとりこもうと努力してきたのかもしれません。それでもどうにもならず、規制は苦渋の選択だったのかもしれません。
だけど、そうだからといって一律に排除するのがいいことなのかどうか。
ひとつは、財産権の制限にあたらないのかどうか、です。この学区に土地を持っている人は今後、ワンルームマンション建設という形での土地活用はできません。まあ学区でまちづくりの委員会をつくって議論しているのであり、「住民の総意」があるわけで、やみくもな規制ではないのですが。
もうひとつは、京都が大学の街であることとの整合性です。ただでさえ、近年、大学が市外に流出している現状があります。ひとむかしの下宿ならいざしらず、いまどきの学生は皆、ワンルームに住んでいると思いますが、そういった学生の住環境整備との整合性はどうなのかと。大学を卒業すればまたどこかに移っていく可能性が高いであろう学生に定住性を求めるのはどだい無理だという気がします。そういった居住者は考慮されない施策だということでしょうか。
それにしても市当局が「画期的」と手放しなのがよくわかりません。たしかに地域のまちづくりは大切なことです。しかし、公共の福祉と私権とのすりあわせや、他の政策との整合性をどうとるかなどにもっと心をくだくのが行政の役割ではないのかといった気がするんですが。行政に勇み足はないのかどうか。
地域には地域固有の事情があるのでしょうし、部外者が軽々に論じることでないのかもしれません。この件の背景にあるのは、伝統的な町家の保護であったり、そこに住む地域住民のコミュニティーを守ろうという、いわば「古きよき京都」をなんとか死守しようとする力が働いている点であるような気がします。町並み保全もまちづくりも根っこのところは同じなのかと。それは情念の世界なのであって、論理が入り込む問題ではないということでしょうか。
追記(2008年8月12日)首相官邸都市再生本部のHPに有隣学区のことが出ています。学校統合が自治会活動に影響を与えているとの記述が気になります。