ぼちぼち そこそこ

脱力と諦観でつづるおっさんの日常

大事なんだけど 知恵産業

京都で知恵産業や知恵ビジネスといった言葉が脚光を浴びているようです。

京都商工会議所は9日、中小企業の新たなビジネスモデルを探る「京都・知恵ビジネスワークショップ」を京都市中京区の京都文化博物館で初めて開いた。京都市内の20社・団体が集まり、京都ならではの「知恵ビジネス」の実例を紹介した。京商は今後も、モデル企業を掘り起こし、情報発信を本格化させる。
京商は昨年11月に策定した「ニュー京商ビジョン」で知恵産業育成を掲げている。ワークショップはその実現に向け「知恵産業の定義」を明確化し、市場ニーズに合った高付加価値のものづくりやサービス育成で中小企業振興を図る狙い。

京都ならではの「知恵ビジネス」 京商、掘り起こしへワークショップ(9月10日の京都新聞朝刊)

もともとは京都商工会議所の音頭取りで始まったことのようです。京都市も力を入れています。

このたび,情報通信技術を使って京都の伝統産業が持つ優れた意匠やデザインを世界的に発信し,幅広くものづくりに活用していただく事業「みやこ!ビエンナーレ(仮称)」が,総務省の募集した「地域ICT利活用モデル構築事業」の委託先候補に採択されました。       
近畿圏での新規事業の採択は,京都市提案の本事業のみです。                
また,この事業は,京都の伝統産業と科学技術を融合した「知恵産業」の趣旨に合致する事業です。

京都市HP

京都の西陣織や京友禅といった製品は、織物や染めの技術ももちろんですが、デザインが優れていたから人々に受け入れられてきました。現代の「産業のソフト化」を京都は先取りしていたということでしょう。知恵産業(知恵ビジネス)は、そういった京都の産業の歴史に沿って出てきた考え方なんだと思います。そのことに異存はありません。

ただ、ひとつわからないのは、このごに及んでなぜ今「知恵産業」なんだろうなという点です。農作物生産が主であったであろう江戸時代にたとえば京都の織物・染め産業が異彩を放っていたというのはわかります。これは知恵産業と呼ぶにふさわしいでしょう。

でも、現在は21世紀です。安くてよいものを生産していれば商売になるという時代でもないでしょう。情報化も進んでいます。起業にはアイデアが必要です。そういう意味では、世間の注目を集めて商売が成り立っていくような新規産業やベンチャーはすべて知恵産業といって差し支えないはずです。

こういった状況の中であえて知恵産業を強調していくことにことさら意味があるのかどうか少々疑問です。かえって若い起業家が混乱しはしまいかという気すらします。ワークショップの開催目的ついても記事で『「知恵産業の定義」を明確化し』とありますが、言葉だけが一人歩きしていることの裏返しのような感じがします。

まあそれでもあえて京都という地で知恵産業の振興をいうとしたなら、ITの活用や京都というロケーションを最大限に生かすといったあたりになるでしょうか。

商工会議所や京都市の取り組みは理解はできますし、必要なことだと思います。ただ、独創性があるから新規ビジネスとして成立するといった面もあるでしょう。そう考えると、独創的なことを思いついてなおかつ行動力のある起業家は、商工会議所などから知恵産業をアピールされるまでもなく、すでに事業の実現に乗り出しているのが実際のところなのではないでしょうか。

京都を拠点にする名のある企業のいくつかが戦後、ベンチャーとして出発し、こんにちの地位を築いたことはよく知られています。その京都で、商工会議所や行政がそこまで熱心に新産業創出や起業の旗振りをしないといけない状況に陥っているということなんでしょうか。もしそうだとしたら、そっちのほうもなんか気になります。