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イケてるのか 京都市営地下鉄経営健全化計画案(骨子)

各紙にも出てましたが、京都市営地下鉄の経営健全化計画案が発表されました。

京都市高速鉄道事業経営健全化計画案(骨子)

京都市も案に対して市民の意見を募っているようですので、(市に直接具申するわけではないですが)素人なりに考えてみました。

京都市の地下鉄経営健全化計画は息の長い取り組みです。

京都市交通局では、平成12年度から「京都市交通事業経営健全化プログラム21」に基づく経営の健全化を推進し、当初計画以上の改善が図られたが、計画を上回る旅客数の減少や規制緩和の影響などにより、収支見通しがきびしい状況となった。そのため、平成14年度に新たな再生計画である「京都市交通事業ルネッサンスプラン」を、さらに平成15年度からその「ルネッサンスプラン」による健全化の取組を進めるため、年次的な行動計画である「京都市交通事業アクションプログラム」を策定し、地下鉄の長期収支の改善に向けた取組を進めていくこととした。
しかし、地下鉄事業を取巻く状況は、長期的な景気の低迷や少子高齢化の進展など大変厳しい状況にある。このため、お客様の見通しや運賃改定などについて収支の見直しを行い、「ルネッサンスプラン」に基づく健全化計画を基本に、新たに「地下鉄事業経営健全化計画」(計画期間:平成16年度〜25年度)を策定し、平成16年3月、総務省が創設した地下鉄事業経営健全化対策の実施団体の指定を受け、本市地下鉄事業の経営の健全化を図っていくこととした。

社団法人公営交通事業協会平成18年度公営地下鉄事業における経営健全化対策に関する調査研究 京都市営地下鉄の経営健全化計画の概要

要するに、いろいろやってはみたが、なかなか実効が上がらないということでしょう。

その中で今回の健全化計画案(骨子)が出てきました。

この中で目をひくのは、赤字脱出年度の前倒しです。公営交通事業協会の資料では不良債務の解消年度は平成65年度となっています。これが新計画案(骨子)では平成62年度と3年前倒しされています(注・別表7)。

そもそも平成62年度って、この計画を策定した京都市の幹部はほとんど誰も生きていないって、と取り敢えず突っ込んでおきます。

京都市としては「厳しい計画をつくってこれだけ進捗を早めた」と国にアピールする意味合いがあるのでしょう。しかし、見逃してはいけません。別表の下には、こう書かれています。

健全化実施後のお客様の数は平成30年度と同様の38万2千人で見込んでいます。

ところが骨子の冒頭(高−2)ではこう書いているのです。

1日あたりのお客様の数は,当初,東西線の醍醐・六地蔵間の開業後では33万5千人,また二条・太秦天神川間の開業後では38万9千人と見込んでいましたが,特に東西線のお客様が少なく,見込みを大幅に下回っており,平成20年度予算で33万2千人と見込まざるを得ない状況です。

現況は当初予測に届いていないわけです。そういった過大な(そして結果的にはずれた)予測を過去にした京都市がまた「平成30年度と同様の38万2千人」と予測し、それを前提に平成62年度で赤字解消と言っているわけです。説得力はあるのだろうかと思います。

そもそも骨子の中で京都市はこう言っています(高−1)。

また,東西線の建設が建設費高騰のバブル期と重なったことや,更に東京都や大阪市などと比べて都市の規模が小さいため,採算が取れる旅客数を確保することが極めて難しいといった要因が重なり,全国一厳しい財政状況になっています。

利用者増は難しいと正直に言いながら、もう一方で利用者5万人増を打ち出しているわけで、正直、よく理解できません。

また骨子では利用者増への対策として沿線への大学誘致に関して触れていますが、これについては本当に利用者増につながるのか疑問だと前に触れました。

(過去エントリー)地下鉄増収 意味不明

もちろん、増収策は利用者増ばかりではないでしょう。骨子では「駅ナカビジネス」の展開などに言及しています。

しかしこれは公営交通事業協会の資料でもすでに触れられています。平成18年度段階でも登場しているのです。本来、骨子では一歩進めて具体的にどう展開していくかに言及すべきなのに、それがよくわかりません。

こうしてみてみると、今回、経営健全化団体になりそうだということで国から計画見直しを求められ、「ちゃんとがんばってやりますよ」と赤字解消年度を前倒しした案を作ってみたということでしょう。

骨子の巻末(高−13)で

このため,長期的な収支改善を図るには,大幅なお客様の増加,運賃改定に加えて,健全化出資制度の継続や建設企業債の借換制度の拡充による利息負担の軽減など,国からの制度的な支援が不可欠です。

と書いているとおり、「だから国も助けてくださいよ」ということなんでしょうが、実現が厳しい目標を作ってしまって、かえって自分で自分の首をしめているのではないかという気がします。

バス部門の計画についても一言。

定期観光バスからの撤退が気になります。赤字だから仕方ないのはわかりますが、国際観光都市としては一種のインフラなのであり、存続すべきかなとも思います。このあたりの判断は難しいところではないでしょうか。

よろしければ以下もご覧ください。

(過去エントリー)「絶望的」にゼツボー 京都市営地下鉄西伸