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現代の貴族 葵祭斎王代

今回は、京都人なら誰でも知っている京都一口メモです。
京都三大祭のひとつの葵祭(5月15日)が近づいてきました。まつりのヒロイン「斎王代」に関して、京都新聞のHPに興味深いデータがありました。さすが地元新聞です。
葵祭のヒロインたち 平成の斎王代(京都新聞)

平成元年(1989年)以降の歴代の斎王代の記事です。
このうち1995、96年は同一人物(95年が雨天中止だったため再度選ばれた)ですから、今年を含めて20人いることになります。一覧にしてみました。備考は、家族や親戚で斎王代を務めたことがある人(カッコ内は務めた年)などの特記事項です。

西暦 父親の仕事 備考
2009 裏千家家元
2008 料亭経営
2007 眼鏡販売会社社長 母(1967)
2006 住職
2005 ゲームソフト会社社長
2004 デザイナー
2003 繊維会社社長 姉(1997)
2002 裏千家教授 本人が東京在住
2001 陶器製造会社社長 姉(1985)
2000 料理店経営
1999 料理店経営
1998 公認会計士 本人が京大卒
1997 繊維会社社長
1996 医者 1995年と同一人物
1995 医者 姉(1991)、叔母(1976)
1994 池坊家元
1993 会社役員
1992 和装小物会社社長 姉(1986)
1991 医者 叔母(1976)
1990 伝統工芸社長 姉(長女、1980)、姉(二女、1984)
1989 林業社長 母(1962)

お父さんが社長とか立派な人ばかりでしょ。社長の場合、和装や伝統工芸関係など老舗が多いようです。料理店経営も目立ちます。大体、京料理ですね。茶道、華道関係が入っているのも京都らしいところです。
親族関係もすごいですよね。母親と二代にわたってやっている人が2人、お姉さんに続いて務める人が5人います。
真偽のほどは知りませんが、斎王代を一回務めるとウン千万円かかるといわれます。お父さんが相当の資産家でないと無理です。
お母さんと2代にわたって務めたということは、母親の実家もお金持ちで、その母が同じようなお金持ちの家に嫁ぎ、そこで生まれた娘がまた斎王代を務めるという構図かと思います。
京都人はこういった構図をよく知っています。京都の幼い女の子が葵祭の行列を見て、「私も将来、斎王代をやってみたい」と親に言っても、アホかと返されるのがオチです。たいがいの女の子は、もの心がつけば「うちの親ではこりゃ無理だな」と気が付くでしょう。だから、斎王代に対するあこがれなんかはありません。
逆にいうと、斎王代に選ばれた女性が「斎王代にあこがれていた」とコメントするというのは、父親が資産家であるということを本人もよくわかっているという証左だといえるでしょう。
ですから、母子2代で務めたり、3人姉妹がそろって斎王代になったりという記事を読んでも京都の一般市民はほほえましく思うわけでもなく、ただ「すごいなあ。お金持ちなんやなあ」とため息をつくだけです。
もうひとついえば、逆に金持ちの娘なら誰でもなれるかというとそうでもないのです。「格」が必要なのです。そのあたりが斎王代のプレミアム感を出しているところです。ひいては京都のプレミアム感にもつながっていると思います。
余談ですが、このあたりが庶民の代表である大阪・今宮戎の福娘と根本的に違うところです。
最後にひとつ。
お金がかかるから誰彼もができるわけでない、という点で斎王代と同じなのが、同じく京都三大祭のひとつ、祇園祭の稚児です。こちらは男児ですが。こういうのが残っているところが京都の京都たるゆえんなのでしょう。
おまけ
20年ほど前は斎王代のプロフィールで身長、体重まで掲載していたんですね。「マルチギャル」(1991年)という表現にも時の隔たりを感じます。
(過去エントリー)
葵祭の京都 その攻略法