ぼちぼち そこそこ

脱力と諦観でつづるおっさんの日常

発言小町 ドキッ

ベタな題名ですいません。
読売新聞サイトの掲示板「発言小町」が人気らしいです。
読んでいるとたしかにおもしろい。しかし、本当に画期的なのは、発言小町が新聞社サイトのコンテンツだという点にあるのではないかと思います。
サイト上での発言は原則的に匿名です。嫁としゅうとめの関係に悩む相談を持ちかけている人も、それに答えて自分のエピソードを披露している人も本当のことを言っているのかどうか誰も検証できないのです。
これまで新聞社をはじめとするマスコミはこう主張してきました。だから実名主義が必要なんだと。新聞社をはじめとするマスコミの実名報道主義は、以上のようなことを反面教師として立脚しているのです。
その新聞社が匿名の掲示板を運営して人気になっている。そこがおもしろい。
私はべつに「矛盾している。ダメじゃないか」と言いたいのではありません。
書き込んだり、読んだりしている人はおそらくよくわかっている。書き込みの内容が事実か否かなんてことはどうでもいいのではないか。内容の真実性なんかに意味を見いだしていないのではないかという感じがします。
片思いの女子高生になりすまして中年サラリーマンが書き込もうが、「わたしの若いころは」と回顧談を披露するおばさんになりすまして女子高生が投稿しようが、そんなことはどうでもいいということです。
おそらく投稿したり、読んだりしているファンの多くは眉つばとわかっていながら楽しんでいるのではないでしょか。
そういう意味では2chとなんら変わりはありません。差があるとすれば、発言小町の場合は編集部員が投稿を見張っていて、サイトが荒れないようにしていることぐらいではないでしょうか。
世間でよくいわれることで、活字はその内容が正確で、ネット情報は不正確だ、というのがあります。
この前提となるのは、情報は正確でなくてはならない、事実、真実でなくてはならないという考え方です。
しかし、発言小町の書き込みは匿名です。真実かどうか検証しようがない投稿がほとんどです。
だから、乱暴にいってしまえば、真実かどうかなんてことはどうでもいいことなんです。発言小町は「情報は真実でなくてはならない」といった考え方を覆しているのではないかと考えます。
発言小町はわれわれが情報に向き合う際にこれまでと違う姿勢を要求しているように思います。新しい情報の消費の仕方といっていいかもしれません。
もちろん実名・匿名の議論で掲示板の書き込みと報道ニュースを同列に扱うことはできないでしょうが、「真実かどうか必ずしもよくわからない情報」を新聞社が提供(少なくとも場を提供)している点が面白いのです。
もう一点は、「情報のプロ」を自任する新聞社が、素人の読者投稿を本にして売っている。しかも売れているというではないですか。
投稿を本にするというビジネスモデルはたしかに昔からありました。発言小町についていえば、新聞社がネットCGMの商売に本格的に乗り出してきたということでしょう。メディアとしては自社がつくった情報を発信していくとともに、CGMを集める場を設定していくことも今後はひとつのビジネスになるということかもしれません。
以下は参考です。
「こんな“お化けサイト”になるとは思っていなかった」――「発言小町」なぜ人気「発言小町」が示すウェブ新聞の方向