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入洛5000万人は砂上の楼閣? 観光統計統一基準

6月27日の日経におもしろい記事が出ていました。

観光庁が2010年度から地方自治体に導入を呼び掛けている観光統計の統一基準について、有名観光地を抱える近畿の府県・政令市の対応が分かれている。算出方法の変更による財政負担の増加や観光客数を下方修正した場合の影響を懸念、早期の採用に慎重な自治体も多い。

ネットに記事が出ていなくて引用が面倒なので、以下、勝手に要約します。

観光庁長官が新たな観光統計に参加するよう要請したのに対し、京都市の門川市長は「採用できる計測方法でないと、採用したくてもできない」と明言を避けた。京都市の算出方法は、交通機関を使って訪れた人数に観光客の割合を掛けるもの。観光庁の方法は、特定の観光スポットで延べ人数を集計して、そこから重複分を除く。京都市は新基準を採用する方向で観光庁と調整中だが、「市内に2000近くある神社仏閣の参拝客の把握は難しく、統計数字が過少となる恐れがある」(観光産業局)と懸念する。

方法がかわると面倒だというのは確かにそうでしょう。でも、私としてはどうしても「統計数字が過少となる恐れがある」との観光産業局のコメントに反応してしまいます。「過少となる恐れ」というのは、分解すると、
1.新方式では現行よりおそらく数字が小さくなる。それも、著しく小さく(過少に)なる。
2.過少になることは、京都市にとってよくないことである。
というニュアンスがあるということでしょう。
コメントを見る限りでは、京都市は「観光スポットが多いから、観光客の実数を把握しきれない」と反論しているようです。その半面、新基準を採用する方向ともいい、観光客の実数を正確に把握するという新基準の有効性はそれなりに認めているような気もします。
京都市が新基準採用を渋っている理由はほかにもあるのではないか。
京都市はつい先日、「観光客が年間5000万人を達成した」と宣言したばかりです。5000万人達成は長年の悲願でした。
過去エントリー
観光の質ってなんだ? 観光客5000万人達成
そして、5000万人達成を前提に「次は量より質だ」ということで次期観光振興計画策定委を発足させたわけです。
過去エントリー
星野さん、初選出 京都市観光振興策定委
京都市の「恐れ」ていることは、おそらくこうです。
5000万人を達成したとする観光客数ですが、新方式で算出しなおすとおそらく5000万人を著しく下回ってしまうのでしょう。そうなると、華々しくスタートした策定委の前提が崩れてしまいます。幸先がわるく、具合がよくないことです。
もちろん、算出方法がかわったとしても京都に来た観光客の実数がかわるわけではありません。でも「京都市への年間観光客5000万人(ただし旧方式の算出による。新基準では3800万人)」などといちいち注釈を付けなくてはならないと、なんだかカッコ悪い(と京都市の関係者は思っているのではないか)ということでしょう。
観光庁は2010年度からの新基準実施を求めています。これに対し、京都市の次期観光振興計画策定は来年1月です。京都市にしてみたら「いずれ新基準を採用するけど、次期計画策定まではそっとしておいて」というのが本音なのかもしれません。
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観光PRに使ったらどうだ 京都市観光振興計画策定委