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「正直に申しますと」 消防ヘリ配備続報

過去エントリーおニューのヘリが来るの続きです。エントリーを書いた7月26日時点では記者会見の詳報は京都市のHPに出ていませんでしたが、31日にアップされました。以下のとおりです。

(ヘリコプターの配備と運航体制の強化との関係)記者
24時間運航体制に向けた今後の予定について伺いたい。
市長
22年度に新しいヘリコプターを導入し,23年度に切り替え,24時間運航ができるようになります。入札手続きなど非常に厳密な手続きが国においても,地方においても必要です。「あたご号」は引退して,展示するなど,その段階で考えていきたいと思っています。
記者
2機配備はそのままで,24時間運航体制の強化になるのか。新しいヘリコプターの配備により何が変わるのか。
市長
ヘリコプターは2機配備していれば十分です。一方で,東京都と仙台市と埼玉県以外は夜になると飛行できない。現在はその2機ともが夜はヘリポートの格納庫にしまってあります。それが24時間運航体制になると夜も飛べることになります。これは画期的なことです。
そしてまず,消防庁から配備されることは別にして,ヘリコプターの24時間運航体制へ移行するために,ヘリポートの改修や操縦士の資格取得経費を予算措置しました。その次に,京都市は「あたご号」を買い換える必要があったわけですが,この買い換えを実質的に消防庁が,24時間運航体制を強化するために整備します。これは単に京都市だけではなく西日本全域で活躍できるものです。
記者
今回の配備により,「あたご号」を更新できない可能性が無くなったということか。また,防災や消火能力が向上するのか。
市長
「あたご号」はどんなことがあっても更新しなければなりません。また,24時間運航体制になることについて正直に申しますと,国や都道府県が広域で行うことを基礎自治体がやるわけです。現在,24時間運航体制を行っているのは西日本ではどこにもありません。中部から関西,四国,中国,九州含めて一切どこにも無いわけです。それを京都市が京都市民のために,と同時に,広域的な活動をするためにも率先して実施することになります。そのことに着目して,国が全額負担してくれるということです。
もちろん機種の性能アップなどはこれからの問題で,どの機種を買うかは検討しますが,機能は同程度を有するものとなる見込みです。
(他都市へのヘリコプターの派遣)記者
西日本に24時間運航のヘリコプターがないということは,例えば他都市で何かが起こった場合は,京都市のヘリコプターを派遣するのか。
市長
そういうことです。費用負担をどうするかは次の課題になりますが,国と連携しながら考えていきます。
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000065951.html

前回のエントリーでは、広域運航を京都市は意図的に広報しないようにしているのではないかということを述べました。しかし確証はありませんでした。それが、会見の詳報をたどるうちに、なんとなく「自分の書いたことは、当たらずとも遠からずだな」という感じがしてきたわけです。以下、詳述します。
要するに、機体は国が買ってくれるけど、「京都だけじゃなく、西日本で仲間で使えよ」ということでしょう。だからタダでくれるわけです。そのへんは当たり前といえば当たり前のことなんですが、問題はそれだけにとどまりません。それに関しては門川市長も「正直に申しますと」と言っています。
この「正直申しますと」というのはどういう意味でしょうか。「隠していたけど、ぶっちゃけこういうことだよ」と言いたいということだと思います。告白するよ、と。
告白の内容は「それ(注・24時間運航)を京都市が京都市民のために,と同時に,広域的な活動をするためにも率先して実施することになります」ということですね。前回のエントリーで紹介しましたが、毎日新聞が書いているとおり、他都市にも出動するということです。
では、他都市に出ていくことがなんで問題になるかというと、これまた門川市長自身がいっているとおりです。「費用負担をどうするかは次の課題になります」ということでしょう。ヘリコプターは国が買ってくれるけど、それを動かすにはお金がかかります。それを誰が負担するかということになってきます。
ひとつは、現状の運航がどうなっているかということです。会見でも言及されていますが(ここでは引用してませんので、京都市のHPを参照してください)、京都市のヘリは京都府内にも出動しています。その出動費用は派遣先の自治体が負担しているのかどうなのかということです。もし負担しているのなら、今回の24時間運航でも大阪市なり神戸市なりに出動コストを払ってもらえるのかどうなのかということになってきます。先行事例の東日本ではどうなっているのかも関係してくるでしょう。
次に、ランニングコストをどうみるかというのもあるでしょう。24時間運航体制という以上は、実際に出動しなくてもパイロットなどは常時待機している必要があります。仮に、他都市に出動した際、実費は派遣先に支払ってもらうとしましょう。その出動が大阪市が月3回で、京都市が月1回しかないとしたら、「出動の実費だけでなく、ランニングコストも出動回数に応じて負担してもらえばいいじゃないか」との議論も出てきそうです。相手が応じてくれるかは別の話ですが。
このあたりの議論は「次の課題」だと市長はいうわけです。会見を聞く限りではいまのところはっきり決まっていないようで、要するにとりあえず京都市が全部負担するということでしょう。ですからわざわざ「京都市が京都市民のために」といった言い方をしなくてはならないのだろうなと思うわけです。
そもそも、「正直に申しますと」というのであれば、正直に言ってないのはいったい何なのか、という疑問も生じてきます。それは、前回のエントリーで言いましたとおり、広域運航に触れていない広報文なんじゃないかということになってこないでしょうか。
24時間運航とか広域運航といった問題は市長のいう「安心・安全」の問題であり、費用対効果だけでははかれません。それはわかりますが、市民の税金が使われる以上は広域運航の費用負担の枠組みをはっきりさせてもらわないと困ります。「ヘリがタダでもらえてラッキー」という話ではないということです。
追伸。予算額が決まっていることを考えると「どの機種を買うかは検討しますが」というのは、ちょっと理解しがたいです。入札の関係があるからそういわざるをえないのでしょうけど。